日本企業の特質を表す際に、過去には必ず使われていた「年功序列」というキーワード。現在、多くの企業では、年功序列の賃金体系が廃止されつつあります。

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2014年には、安倍首相が「子育て世代の処遇を改善するためにも、年功序列の賃金体系を見直し、労働生産性に見合った賃金体系に移行することが大切だ」と述べ、年功序列による賃金体系の見直しを検討するよう求めたことが記憶に新しいですが、実際には2000年前後から、大手企業で年功序列の見直しが始まっていました。

自動車業界では、ホンダが2002年から、日産自動車が2004年から一般社員の年功序列を廃止し、役割や成果、発揮能力に応じた賃金制度を導入して話題となりました。これに続く形で、2014年には日立製作所も、管理職を対象に年功序列を廃止すると発表し、2015年からはパナソニックも「仕事ベースの処遇」を取り入れるようです。

では、実際に年功での賃金差は是正されたのでしょうか。厚生労働省の統計調査で平成11年と平成25年を比較すると、男子社員については全体として年功格差が縮まったように感じられます。ただ、50代の賃金レベルが依然として高く、逆に30代・40代の金額が抑えられるようになってしまいました。
女子社員については、年齢格差は増大していますが、30代以降減少傾向だった賃金レベルが幾分改善し、50代手前まで賃金が上昇していくことがうかがえます。結論としては、男性はまだまだ中高年がかなり高いレベルの賃金水準を維持しているということです。

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では、男性の賃金はどの年代で減少に転じるのでしょう。同調査によると、平成25年の結果では、50代後半になると役職定年や早期退職、給与カットなどで賃金レベルは低下しています。今後、人件費の抑制を進めようとするときには、その前の40代後半からというのが、現実的な流れとなるのではないでしょうか。いわゆる「バブル入社組」にツケがまわってくる日も、そう遠くないかもしれません。

成果主義を望み、年功制を廃止すべく世の中が推移していく一方で、若手社員を対象としたあるアンケートでは、興味深い結果がでています。

経済学者の大竹文雄氏が実施した報酬の推移に関するアンケートでは、「5年でもらえる給料総額が同じ場合、どのようにもらいたいか」という問いに対し、半数以上の人が「緩やかな右肩上がり」を選びました。その理由に「年々収入が減少すると仕事への意欲が維持できない」という答えが多く上がりました。仕事の実績に基づいた評価で賃金が決まるべきだと考えている一方で、もし実績が悪化し収入が減ってしまったら、モチベーションを維持できない、という実感があるようです。

年功序列から成果主義への完全な転換にはまだ時間がかかるものの、労働力が不足し労働市場が流動的となった今、完全な年功序列が復活することはありえません。若手社員の望む「緩やかな右肩上がり」は、手に出来ないゆえの憧憬なのかもしれません。

<参考>
http://nnt-sokuhou.com/archives/40482227.html
https://news.careerconnection.jp/?p=3214
http://www.itmedia.co.jp/bizid/articles/1308/20/news010.html
http://president.jp/articles/-/13555