ここ数年、働く高齢者が急激に増えています。

平成26年『高年齢者の雇用状況』によると、60歳以上で働いている人は、約550万人。内閣府の調査では、60歳以上の男女に『いつまで働きたいか』と聞いたところ、『70歳以降まで』または、『働けるうちはいつまでも』と答えた人が、71%に達しています。

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では、なぜ年金を受給する年齢になっても、これだけ多くの人が働き、また働き続けたいという希望をもっているのでしょうか。厚生労働省が65歳~69歳の男性就業者の働く理由を調査したところ、6割の人が上げたのが「経済上の理由」でした。多くの高齢者が、生活を維持するために、年金だけでは十分でなく、やむを得ず働いているという状況がうかがえます。

しかし、企業での定年後の再雇用では、一般的に賃金などは大幅に減少し、かといって60才以上の人材を新規で雇用してくれる企業は多くはありません。厚生労働省は、65歳以上の人を雇う企業への助成金を引き上げることや、シルバー人材センターの規制を緩めることなどを検討しており、高齢者の就業を後押しする方針です。

一方、すでに高齢者を積極的に受け入れ活用している企業があります。その名も「高齢社」。
高齢者専門の人材派遣会社で、登録社員の資格は60歳以上。現在、660人が登録しており、平均年齢が68.4歳で最高齢者は81歳です。ガスの開栓・閉栓、工事現場の監督、倉庫管理、家電修理、施工品質点検など100種類を超える事業内容で、登録社員たちが生き生きとその能力を発揮しています。

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もちろん、働き手が高齢者ならではの工夫も。例えば、勤務体系。勤務日は週に2日でも3日でもよく、毎月本人が翌月の勤務スケジュールを申告し、それを基に勤務表を組んでいます。
また、いくら元気といっても高齢であり不測の事態がおこらないともかぎらないので、2人1組で1人分の仕事をワークシェアリングしているそうです。2人で仕事を行っていれば、一人に何かあったときにもう1人が対応できるからという配慮です。
さらに、本社には冷蔵庫が二つ置かれ、中には缶ビールとつまみがぎっしり入っているというのも、嬉しい気配り。午後4時以降に振る舞うことで、登録社員が気兼ねなく会社を訪れる雰囲気を作っているとか。

「高齢化社会とは高齢者をうまく活用する社会のことだと思います。そして、高齢者にとって重要なのは“キョウイク”と“キョウヨウ”なんです。
つまり、今日行くところがあり、今日の用事があることです」と会社を設立した上田社長は語ります。同社は、2013年には中小企業基盤整備機構の「日本ベンチャーアワード」で高齢者雇用支援特別賞を受賞し、経済産業省の「ダイバーシティ経営企業100選」にも選ばれました。

「働きたい」「働かないといけない」多くの高齢者たち。労働力の不足が見込まれる日本社会では、将来「高齢社」のようにシニア世代の労働力を活かした企業が、もっともっと増えていくのかもしれません。

<参考>
http://www.nhk.or.jp/ohayou/marugoto/2012/07/0706.html
http://irorio.jp/nagasawamaki/20150527/232399/
http://news.mynavi.jp/news/2014/11/05/021/
http://president.jp/articles/-/12389