いつの時代も新卒採用では、各社が知恵を絞ってより良い人材を選び出そうと試行錯誤するものです。履歴書や学力試験だけではわからない、適性やポテンシャル、会社とのマッチングを見るために、いろいろな方法で試験が行われます。そんな新卒採用試験の中でも、創業間もない1970~1980年代においては、とても変わった試験で合否を判定していた『日本電産』の採用試験をご紹介します。

◆ 大声試験(1976~1977年)
まず一つの文章を用意。テストを受けに来た学生に順番にこれを音読させて、声の大きな順に採用しました。「リーダーシップを発揮して、人をぐいぐいと引っぱっていく人は声が大きいし、何事に対しても自信を持っている人は、相手の目をみてはっきりとしゃべるという」信念に基づいた採用でした。

◆ 早飯試験(1978年)
受験者に対し「試験の前に、ゆっくり昼ご飯を食べて下さい」と伝え、その中から早く食べ終わった順に33名を無条件に採用。ふるまった弁当には、スルメや煮干し、佃煮、サラミソーセージを入れ、さらに米はシンが残るように固めに炊いて食べにくくしたそうです。「飯を早く食べ終わる人は何をやっても早く、しかも好き嫌いなく何でも食べる人は健康だ」と言う仮説から、この試験を行ったといいます。実際、この採用で入社した人の多くが、病欠することが少なかったそうです。

◆ 便所掃除試験(1979年)
素手で便所掃除をさせて、その出来映えで判断。「単に試験だから仕方なしにやっている人や、気の回らない人の掃除は、便器の裏側を見ればすぐにわかる。見える所はきれいにしてあっても、見えない所はほったらかしである。しかし、本当にきれいにしようとする者は、裏側もきちんと掃除が行き届いている。」と創業者が著書で語っているように、外観や塗装のチェックだけではなく、外から見えない内部や細かい部分にも気を配るよう『品質管理』ができる人を採用しようという考えです。

◆ 先着順採用(1980年)
入社試験の開始時間を決め、その開始時間より早く会場に来た順に採用。「出勤の遅い人は大体において仕事の成績も悪い。出勤時間ぎりぎりになって寝惚け顔で会社に飛び込んでくるような人は、まずいい仕事をしていないという調査結果」から、この方法で採用したとのこと。 ◆ 留年組採用(1981年) 採用条件に「留年経験者に限る」という項目を入れ、留年した学生ばかりを採用しました。しかし、ただ留年した人をやみくもに採用したのではなく、なぜ留年したかを徹底的に問いただし、遊び以外の目的で留年した人の中から、熱意のありそうな人や必然性をもって留年した人など、ユニークな理由を持っている人を優先的に採用しました。

いずれの採用も、信念に基づいて判断されていて、その基準も明確です。また、付け焼き刃で対応することができないその人の「習慣」や「性格」や「経験」を端的に読み取っていて、本質を捉えているのではないでしょうか。

<参考>
http://matome.naver.jp/odai/2132949328677520401?page=2
http://blog.bouze.me/121
http://blog.workshop-boys.com/?search=%C6%FC%CB%DC%C5%C5%BB%BA