政府の旗ふりで始まった「ゆう活」。日本版のサマータイムを目指しているようです。スキージャンプの葛西選手が出演するテレビCMも話題になっていますが、実際の働く現場にはイマイチ浸透していないという声も…。「ゆう活」のひな形となっているサマータイムとはいったいどんな制度なのか、そして導入のメリット/デメリットを考えます。

そもそもサマータイムとは、何なのでしょう。世界各国で取り入れられているこの制度は、デイライトセービングタイム(DST)と呼ばれ、日の長い夏の間、時間を1時間進めて日光を使って電気を節約しようという取り組みです。アメリカでは、3月の第2日曜日から11月の第1 日曜日まで、ヨーロッパでは3月の最終日曜日から10月の最終日曜日までを、サマータイムにしています。

現在、国連加盟国193カ国のうちサマータイムを実施しているのは、64カ国で全加盟国の約1/3となっています。ヨーロッパはアイスランドやロシア、ベラルーシを除く国のほとんどが行っており、北米も地域的に例外はあるものの、ほとんどの国で行われています。アジアやアフリカでも、一部の国がこの制度を導入しています。地図上でその分布を確認すると、サマータイムを実施している国の多くが、高緯度に位置していることがわかります。夏と冬における「昼の時間」の長さが大きく変わる国では、この制度によって照明の電力を1時間減らすことが可能です。それによって節電効果が生まれるのでしょう。

一方で、低緯度の地域では「昼の時間」の長さは、冬と夏でそれほど変わらないので、照明に関してはあまり効果が期待できません。また、熱い気候の国も多く、家庭でのエアコン使用時間がかえって増え、結果として電力消費が増加してしまうという試算もあります。

日本は東京が緯度35度であり、比較的高緯度に位置する国といえますが、サマータイムを導入した際に、節電効果は期待できるのでしょうか?高温多湿な日本の夏は冷房が不可欠。サマータイムを導入することで、夜間の家庭での冷房消費量が増加するであろうことは、想像に難くありません。実は、過去に1948年〜1951年に日本でもサマータイムが取り入れられたことがありましたが、定着するには至りませんでした。

日本全体では、節電という観点からはあまりメリットのなさそうなサマータイム。しかし、緯度がさらに高く、ヨーロッパやアメリカに近い北海道では、どうでしょうか。日の出の時間も早く、東京に比べても夏の「昼間の時間」が1時間長いといわれる北海道。実は2004年〜2006年に、サマータイム導入の実証実験を行っています。実際に取り入れた企業にアンケートを実施したところ、「出勤時の混雑回避」「飲食店で早い時間から客入り増加」など良い点が挙げられた一方で、「営業時間の延長」「家族と時間が合わない」などの課題も挙げられました。

余暇の拡大には寄与しても、節電はあまり期待できないサマータイム。地域的に取り入れるにも、まだまだ課題が多そうです。

<参考>
http://www.gov-online.go.jp/tokusyu/u-katsu/
http://www.time-j.net/uc/dst/
http://www.nikkeibp.co.jp/sj/2/column/a/138/index1.html
http://suumo.jp/journal/2013/05/07/43033/